ステージ制作にあたって
「月桃の花」歌舞団企画部
一人のイラク学生が撃ち殺された・・
2005年3月15日、イラクのバスラ大学に通う一人の学生がイスラム主義の武装民兵に撃ち殺されました。この日、ピクニックに出かけた学生仲間が民兵に襲われてカメラや携帯電話を壊され、一人の女学生が衣服を裂かれ殴られていた。それを助け出そうとしたためです。殴られた女学生は2ヶ月間こん睡状態に陥りました。なぜ、学生たちが襲われ殺されたのか?イスラム主義の勢力が、女性が遊びに出かけたり、肌の見える服を着たり、若者が携帯や音楽を楽しんだりすることを「神」の名のもとに暴力で「禁止」しているからです。そして、占領軍と警察は武装勢力の行動を黙認しているからです。
バスラの学生と市民は立ち上がった
しかし、学生たちはひるまず、翌3月16日、一切の武器を持たずに抗議デモに立ち上がりました。学生たちは犯人の処罰と武装民兵の大学キャンパスからの撤退、宗教と政治・教育の分離を叫びました。多くの高校生や一般市民が応援に駆けつけ、デモは数千人にふくらみました。その武器を持たないデモ行進に、武装民兵も占領軍も警察も発砲できませんでした。その結果、民兵組織は学生を射殺したことを公式に謝罪しました。このたたかいの中心に立ったのが、イラク市民レジスタンスをはじめとする「イラク自由会議」の人々でした。
いま、イラクで起こっている本当のこと
私たちはイラク市民レジスタンスの人々との出会いの中から前作「ちるぐゎーと魔法のランプ〜イラク誇りを歌う〜」を制作、上演してきました。幸いご好評に迎えられましたが、同時に「イラクはもう落ち着いていると思っていたのに」という驚きも多く寄せられました。それほどに日本国内ではイラクの事実が伝えられていません。いまイラクで作られている新憲法は、イスラム主義勢力によって「女性を奴隷あつかいする」憲法にされようとしています。日本国憲法が定めているような基本的人権はもちろん認められていません。イラクの女性や労働者は、バスラの学生たちが受けたような非人間的なあつかいを、新憲法によって強制されようとしています。
イラクの人々の希望は?
イラクの一般市民は、今も占領軍のテロと武装勢力のテロによって命を奪われ、さらに「新憲法」によって人間としての権利まで奪われようとしている。これがイラク戦争と占領が生んだ現実です。この絶望的な現実に、しかし「イラク自由会議」の人々は立ち向かい、連帯の輪を広げています。彼らの訴えは明快です。「テロをテロでなくすことはできない。だから非武装・非暴力の民衆の力でイラクを再建しよう」「宗教や民族による支配でなく、宗教と政治を分離した民主的な憲法を制定しよう」と。この声とイラクの現実を前にして、私たちは新しいイラク連帯の舞台をつくろうと決めました。
「心の武装」が進む日本の私たちの希望は?
いま日本では、自衛隊と地域住民が一体となった対テロ実働訓練が計画され、地域では「不審な外国人」を監視する体制が進んでいます。私たち市民がお互いを監視し、警戒しあう「心の武装」が進められているとも言えます。この「心の武装社会」の中で生きていく私たちにとっての希望は何なのか?それは「武装社会」を生きるイラクの人々の希望と重なるのかどうなのか?今回のステージではそのことを最後まで追求したいと思います。どうか、このステージをご覧になって歌舞団と一緒に考えて下さるようお願いします。